Wizard Notes

Python, JavaScript を使った音楽信号分析の技術録、作曲活動に関する雑記

ディジタルフィルタ

シュレーダーリバーブ(人工残響エフェクタ)のPython実装と試聴デモ

今回は,以下の記事で紹介したオールパスフィルタによる残響生成を用いて、実用的な残響エフェクタとして有名なシュレーダーリバーブをPythonで実装してみました。 www.wizard-notes.com シュレーダーリバーブの概要 フィードバック型コムフィルタの回路につ…

Python:直列オールパスフィルタによる人工残響の生成と試聴

「信号処理に欠かせないオールパスフィルタ―」で紹介したオールパスフィルタの利用例として、人工残響フィルタを実装してみました。 設計方法 フィルタ応答の比較 試聴 Python実装 参考文献 設計方法 直列オールパスフィルタによる人工残響生成はシュレーダ…

リアルタイム雑音抑圧処理:適応線スペクトル強調器 (ALE) のPython実装と適用例

音信号向けの簡単かつ実用的なリアルタイム向け雑音抑圧処理として,以下の書籍で適応線スペクトル強調器 (ALE) が紹介されていました. 上記の書籍を参考にしつつ,Pythonでの適応線スペクトル強調器 (ALE)の実装と,様々な信号への適用例を紹介します。 適…

1次IIRオールパスフィルタでローパス/ハイパスフィルタを作る(Python実装)

「信号処理に欠かせないオールパスフィルタ―の概要・使い方・利用例」では、オールパスフィルタによって低演算量で様々な周波数特性のフィルタを作成できることを紹介しました。 www.wizard-notes.com この記事では、その具体例として1次IIRオールパスフィル…

信号処理に欠かせないオールパスフィルタ―の概要・使い方・利用例

※2022/9/28: λの算出式の符号が間違っていたためプロットとともに修正 信号処理におけるフィルタとしては、ローパス/ハイパスフィルタのような振幅特性を活用するフィルタが良く知られています。 しかし、一方で位相特性のみに影響を与えるオールパスフィル…

Python:エフェクター(音響効果処理)を簡単に実装・リアルタイム再生できるクラスの作成

入出力の管理リアルタイム音響信号処理を使った身近な機器としては、ボーカルやギターなどの楽器で利用されているエフェクターが挙げられます。 エフェクターは信号処理としては簡単なのですが、実際にPCでプログラミングをして音を出力するのは準備が割と大…

Python:numba (jit)で音響信号処理の高速化 - 2次IIRフィルタの処理時間計測

数値計算でよく利用されている Python (CPython) ですが、for文の処理が遅いという問題点があります。 音響信号処理ではC/C++風に配列の各要素にアクセスが必要な処理を for文を使って実装することが多いため、これは致命的です。 そこで、Python用のjitコン…

適応逆ノッチフィルタによるサイン波/調波成分の抽出(Python実装)

前回紹介した適応ノッチフィルタ は、正弦波信号を除去するアルゴリズムでした。 www.wizard-notes.com www.wizard-notes.com しかし、音楽信号処理でよくある楽音を抽出したいという要求には適応ノッチフィルタは利用しにくいです。 そこで今回は、正弦波信…

多段適応ノッチフィルタで複数の正弦波を除去/ドラム・打楽器音の抽出(Python実装)

前回の記事では、適応ノッチフィルタを使って音高が未知の正弦波を除去しました. www.wizard-notes.com しかし、正弦波が複数ある区間ではうまく動作しませんでした。 そこで、今回は複数の正弦波を除去できる、多段適応ノッチフィルタを紹介します。 また…

Python:sounddeviceを使った音声ファイルの再生・リアルタイム処理の実装方法

以下の記事では,Pythonで音の再生・録音を行うためのライブラリ sounddevice を紹介しました。 Python-sounddevice で音声や歌声をリアルタイム収音・再生・録音 - Wizard Notes この記事では、音の信号処理/アプリ開発でよく使う、音声ファイルの再生をso…

Python:適応ノッチフィルタで正弦波(周期性雑音)を除去

音響信号処理の良い参考書である プログラム101付き 音声信号処理 では、適応信号処理の一例として適応ノッチフィルタが紹介されています。 ただし、プログラムがC言語のみであり、また、数学的な説明が僅かであるため仕組みが分かりにくいです。 そこで、適…

グラフィックイコライザの周波数特性を補正するための最小二乗法による利得最適化

前回は、単純なグラフィックイコライザとして、1/Nオクターブバンドごとに双二次フィルタを用意し直列接続した実装を解説しました。 www.wizard-notes.com しかし、この手法だと、グラフィックイコライザ全体の周波数特性として各中心周波数での振幅値が指定…

Python:1/1, 1/3オクターブバンド グラフィックイコライザの実装

音源制作の現場で最も利用されているプラグインの一つとして、ある周波数帯域を増幅/減衰させるイコライザがあります。 その一種であるグラフィックイコライザをPythonで実装してみます*1。 グラフィックイコライザについて オクターブバンド分割(中心周波…

OpenAir:様々な空間で収録されたインパルス応答 (IR) の無料データセット

https://www.openair.hosted.york.ac.uk/ 動画やゲーム,AR/MRコンテンツで利用する音源にリアルな残響音を付加する手法として、コンボリューション(畳み込み)リバーブがあります。 これは、インパルス応答と呼ばれる実測で収録した残響音データを使って、…

scipy.signal.oaconvolve:FIRフィルタの畳み込み演算を効率的に行うオーバーラップ加算法の使い方と計算速度について

はじめに 音信号処理では音を加工する1つの方法としてFIRフィルタがよく使われます。 具体的な計算としては、元の信号とFIRフィルタ信号の畳み込み演算を行います。 この畳み込み演算を時間領域で素直に行うと、元の信号長×FIRフィルタ長の計算が必要です。 …

高次のバターワースフィルタ(ハイパス)の不安定性について scipy.signal.butterworth

マルチバンド処理用のフィルタバンク実装でバターワースフィルタによるハイパスフィルタを使おうとすると,7次くらいから周波数応答が不安定になりました. ハイパスフィルタ 周波数応答をプロット してみると,scipy.signal.butterworthのハイパスフィルタ…

Python:マルチバンド処理用フィルタバンクのクラス設計・実装・動作検証

以前の記事では,木構造のような信号処理フローのマルチバンド処理を紹介しました. この記事では、実装・利用しやすさに着目して信号処理フローを再設計・実装します。 設計 以前の記事では木構造の処理フローでしたが,今回は低域のカットオフ周波数から徐…

オーディオクロスオーバー向け補完フィルタ(バターワース)でのオールパスフィルタのフィルタ係数算出と検証

以前の記事で,低域・高域を別々に処理するようなマルチバンド処理(オーディオクロスオーバー)の実装方法を紹介しました. www.wizard-notes.com www.wizard-notes.com 上記の記事では,補完フィルタのローパス・ハイパスフィルタの並列接続したことで生成…

複数の2帯域分割(補完)フィルタを使ったマルチバンド処理のPython実装(3バンド以上)

以前の記事では,低域・高域を別々に処理するようなマルチバンド処理(オーディオクロスオーバー)を実現するフィルタバンクの例として、2バンドの場合の実装方法を紹介しました. www.wizard-notes.com ただ,より実用的なプラグイン/ソフトウェアを作るこ…

Python:FIR/IIRフィルタの直列/並列接続の周波数応答(伝達関数)プロット (scipy.signal.freqz)

複雑な信号処理プラグインを開発する場合、複数のFIR/IIRフィルタを組み合わせることがよくあります。 そこで,FIR/IIRフィルタの直列/並列接続時の周波数応答をプロットするサンプルコードを作成しました。 回路全体の伝達関数を確認するだけでなく、フィル…

マルチバンド(オーディオクロスオーバー)処理を実現するフィルタ(Butterworth, Linkwitz-Riley)のPython実装(2バンド)

低域・高域のような周波数帯域別に信号処理する場合、いい感じに帯域を分割するフィルタが必要になります。 ソフトウェア/プラグインの具体例としてはマルチバンドコンプレッサが挙げられます。 このような回路の特性としては、音質に影響を与えるような振…

再帰的ダウンサンプリング法による定Q変換 (CQT) のPython 実装とアルゴリズム解説

定Q変換 (CQT)は歌声・音楽の音高/メロディ/和音を分析するのに便利な周波数分析方法です。 例えば,CQTスペクトログラムを算出すれば各音高(ドレミファ…)がどのくらいの強さで鳴っているかを時系列で観察することができます。 以下の記事では、定Q変換…

定Q変換 (CQT: Constant-Q Transform) の 解説(音高・コード・メロディの分析向け)

はじめに 音信号の時間周波数分析にはFFT (高速フーリエ変換) /STFT(短時間フーリエ変換)がよく使われます. しかし,FFTの性質上,音高に関わる分析をしようとすると実装や分析精度の向上に手間がかかります。 そこで,この記事では音楽信号の分析によく…

ステレオ楽曲の位相差を確認できるフェーズメーターの作り方(極座標ベース)

前回の記事では,ステレオのL, R チャネルの信号を,リサージュ図形の として与えることで音の広がりを可視化しました. www.wizard-notes.com この記事では,直交座標 を極座標(絶対値と偏角) 表記にしたバージョンを紹介します. 参考: Goniometer Algo…

Python resampyで音声・音楽ファイルをリサンプリング(アップ/ダウンサンプリング)

サンプリング周波数変換(リサンプリング,アップ/ダウンサンプリング)は,非常によく利用されるオーディオファイル処理です。 ただ、リサンプリングは時間がかかる処理なので、なるべく高速なアルゴリズム・ライブラリを使いたいところです。 特に大量の…

Python:matplotlibで双二次フィルタの極・零点をプロット

自作の双2次フィルタ (Biquad Filter)のPythonライブラリ PyQuadFilter に極と零点をプロットする関数を実装しました。 exmamples/04_plot_pole_zero.pyがサンプルコードとなっています。 プロット例 オールパスフィルタの極/零点プロットです。 q = 1.5 fc…

Pythonとresample_polyでオーバーサンプリング

scipy.signal.resample_polyを使ってオーバーサンプリングを実装してみました。 resample_polyのデフォルトの設定では、パラメタβ=5.0のカイザー窓によるFIRローパスフィルタが使われています。 注意すべき箇所として、フィルタ長はresample_polyの引数では…

双2次フィルタ (Biquad Filter) の周波数特性(振幅・位相)の一覧

以下の記事で作成した双2次フィルタのプログラムで出力した、双2次フィルタの周波数特性(振幅・位相)の一覧ページです。 www.wizard-notes.com カットオフ周波数 (fc) とQ値 (q) を動かしてプロットしています。 双2次フィルタ作成の参考等にご利用くださ…

様々なサンプリング周波数に対応した K-weighting フィルタの設計

2021/1/3: alphaの算出方法がsin(w0)/Qとなっていたため、sin(w0)/(2Q)に修正 導入 ラウドネスメーターで使われるLKFSやLUFSの算出における信号処理の流れは、以下のブロック図のように、 K周波数重み付け(K-weighting) 各チャネルでエネルギーを計算し集…

Python PyFilterBankで環境音をオクターブバンド分析

はじめに 音信号の分析では、時間波形を直接分析するのではなく、様々な周波数分析手法を利用します。 比較的細かい周波数成分を見る方法としては、 STFT (短時間フーリエ変換) CQT (定Q変換) メルフィルタバンク がよく使われています。これらのライブラリ…