ジャズにおける和音進行のリハーモナイザーションについて、段階ごとに分かりやすく説明してくれている動画です。
ニ短調(D minor)であるボーカル+ピアノの曲(Juice - Lizzo)の一部を題材に、7段階のリハーモナイザーションの実例を示しています。
- Level 1:"Bell Pepper" - II-V進行
- Level 2:"Poblano Pepper" - 裏コード・テンション
- Level 3:"Jalepeño Pepper" - コードエクステンション
- Level 4:"Piri Piri Pepper" - ペダルポイント
- Level 5:"Habenero Pepper" - 非機能和声
- Level 6:"Ghost Pepper" - 不協和音の解法
- Level 7:"???" - ゼンハーモニック
- 感想・まとめ
Level 1:"Bell Pepper" - II-V進行
4和音、II-V、ノンダイアトニックコードを使った、初歩的なリハーモナイザーションです。
コード進行を見てみます。
|| Dm7 | Cm7 F7 | B♭6 | Em7(♭5) A7 |||
2,3小節目の Cm7 → F7 →B♭6 は、(下属調平行調である)変ロ長調(B♭major)からの借用和音(転調)となっており、IIm-V-Iと進行・解決しています。よくあるツーファイブの進行です。
4小節目、Em7(♭5)→ A7 は、元のニ短調における IIm7-5 → Vとなっており、ここでもツーファイブとなっています。そして、1小節目に戻ることで、IIm-V-Iと進行・解決になります。
この"ツーファイブ"は、ジャズハーモニーにおける”meat and potatoes”(基本)と動画で述べられています。
なお、1小節目の Dm7 → Cm7 は変ロ長調における IIIm7 → IIm7 進行、3,4小節目の B♭6 →Em7(♭5)は ニ短調における VI♭6 → IIm7-5 とみなせます。
Level 2:"Poblano Pepper" - 裏コード・テンション
トライトーンサブスティテューション(裏コード)やテンションコードを使っています。Level 1よりも、さらにジャズっぽい響きになっています。
|| Gm7 A7#9 E♭9 | Dm7 B7 | B♭6 Gm7 C7 | F9 Em7(♭5) A7 ||
基本的には、
- 2小節目:F7の裏コードであるB7を使用
- 3小節目:B7からB♭6に半音下降して進行(tension and release)
このような和音は、ジャズハーモニーのボキャブラリーにおける "bread-and-butter" (常用するもの)と述べられています。
Level 3:"Jalepeño Pepper" - コードエクステンション
さらにジャズっぽさが増して、だんだんハーモニーとして成立しているのかが怪しくなってきました。非常に複雑です。
7thコードの上に、さらに音が積み重ねられています(コードエクステンション)。これを堆積というらしく、三度堆積・四度堆積といった用語で 検索するとよいかもしれません。また、動画中では、三度堆積をTertian Harmony (3次ハーモニー)と呼んでいます。
Level 4:"Piri Piri Pepper" - ペダルポイント
これまでとは譜面が少し違います。低音部が同じ音が継続して鳴っており、高音部は和音が変化しています。このような 和音進行のさせ方は(低音部)ペダルポイントと呼ばれるようです。
Level 5:"Habenero Pepper" - 非機能和声
非機能和声を使ったリハーモナイザーションです。ここまでくると、リハーモナイザーションの指針を定めるのが大変そうな気がします。
Level 6:"Ghost Pepper" - 不協和音の解法
出だしから強烈で不可解な響きです。譜面も???な感じです。
”Liberated Dissonance"(不協和音の解法)ということで、 "Poly Chord"(複合和音)、"Mirror Harmony"(投影法)、"12-Tone/Serial stuff"(十二音技法)といった近代音楽の技法が使われています。
Level 7:"???" - ゼンハーモニック
メロディのスケールに合わせて、各コードの音高にピッチの指定(イントネーション)が入ります。
"Xenharmonic"(12音平均律に基づかないハーモニー)と呼ばれているようです。
感想・まとめ
7つのレベルでジャズハーモニーを学べる動画:"7 levels of Jazz Harmony"を紹介しました。レベル1、2でもなかなか難しいので、後半はまだちゃんと理解できていませんが、リハーモナイザーションの勉強にオススメです。
最後の "Xenharmonic" は、動画内で紹介されているように、Lofi-Hiphop系の音楽を作るにあたって重要な技術だと感じます。
また、記事中では紹介しきれませんでしたが、動画中では各レベルに応じたアーティストの紹介もあるので、是非聞いてみてください。